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安倍政権誕生を待望する(9)

自信をもって「イノベーション」を強調なさつて下さい

埼玉大学教授
長谷川三千子

 日本の政治において、誰か或る政治家に希望を托すなどといふことは、ながらく考へられもしないことでありました。しかし、いま本当に久しぶりで、新首相を待望するといふことができるやうになりました。大変嬉しいことであります。心から安倍新政権の誕生を待望してをります。
 大筋のところでは、申し上げるべきことは何もございませんので、ただ小さなアイディアだけを一つ、補足して申し上げておかうかと存じます。先日、安倍さんは「イノベーション」といふことを新しい目標として取り上げていらつしやいました。その後あまり話題になりませんでしたが、私は、これは大事な課題になりうるのではないかと思ひます。
 一つは、もちろん、「物づくり」の重要性といふことがあります。海外生産のうまみが減り、ネットバブルが反省されて、いま再び「物づくり」の重要性に人々の目が向けられてゐます。絶えざる技術革新によつてもう一度日本経済を根底からしつかりさせること――今ならそれが可能だと思ひます。
 そしてまた、もう一つ大事なことは、日本経済の底力をつくり上げうるやうな真のイノベーションは、決して個人プレイで為しとげられるものではない、といふことであります。成功した大きな発明の実例を分析してみますと、いづれも独創的な発想の転換と、それにつづく実用化のための根気のよい試行錯誤のプロセスとが、必らずセットになつてゐます。つまり、チームプレイに支へられてゐないイノベーションといふものはないのです。言ひかへれば、ただトップ・プレーヤーだけが報ひられるやうな「格差社会」では、真のイノベーションは育たず、地道なチームプレイがしつかりと評価される「日本型経営」によつてこそ、イノベーションの成功が保証されるのです。今回「脱格差社会」といふことが一つの争点となつてゐますが、安倍さんのおつしやる「イノベーション」こそ、実は脱格差社会の正道と言つてよい、と存じます。どうぞ自信をもつて強調なさつて下さいませ。