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安倍政権の1カ月を検証する

ジャーナリスト
(元産経新聞論説副委員長)
花岡信昭

 安倍政権は発足1カ月余りを過ぎたが、きわめて順調な「ロケットスタート」(中川秀直自民党幹事長)となった。政権の最大のネックと喧伝されていた「靖国」「歴史認識」「対アジア外交」をめぐる課題は、首相就任から2週間たたずしての訪中、訪韓であっさりと乗り越えた。
 8月15日、小泉前首相が靖国神社参拝を敢行したときには「とんでもないことをしてくれた」「これで対アジア外交は危機的状況に陥った」「歴史認識が自民党総裁選の最大の争点」などとしたり顔の論評が目立ったが、すべて政治センスの欠如による虚言であることがはっきりしたわけだ。そうした人たちから釈明や反省の弁が聞かれないのはどうしたことか。政治展開の核心部分を読み間違えたのだから、政治評論の世界から足を洗ってもらいたいものだ。
 安倍首相がこの問題を見事にクリアーしたのは周到な状況判断に基づいた「あいまい戦術」による。「村山談話」「河野談話」を継承するといった発言などに対して、保守派の間には不満もあるようだが、現実政治は「思想戦」ではない。むしろ、靖国、歴史認識といった問題を政治の表舞台からいったん遠ざけた巧みさ、したたかさを評価すべきだろう。
 北朝鮮の核実験が安倍政権には格好の「追い風」となった。北朝鮮に対して強硬姿勢を取ることは、大方の国民の支持を得ている。70%前後という圧倒的な支持率を維持しているのも、これが大きく貢献しているといっていい。金正日総書記は図らずも安倍首相を援護してくれたことになる。
 来年7月の参院選が安倍政権の行方を左右する。自公与党で参院でも過半数を維持するには、公明党が現状維持だったとして、自民党は52議席獲得する必要がある。前回は49議席だった。3議席の攻防戦が安倍政権の命運を決するのだ。仮に大敗ということにでもなれば、待望久しかった本格保守政権はわずか10ヵ月の短命に終わりかねない。
 安倍首相はその国家観を踏まえ、憲法改正を真っ向から掲げた。その先行きを占う上でも、まず参院選に勝たないことにはいかんともしがたい。ここは我慢の時期である。「安倍人気」を失速させないよう、あらゆる「智恵」が求められている。参院選を頂点として、それ以前とそれ以後の安倍政権は性格が違うはずだ。そこをきちんと見極める必要がある。(了)