バックナンバー



中国、北朝鮮に対する安全保障上考える事態とは

戦略研究学会副会長
元防衛大学校教授
中山隆志

 北朝鮮が今回の協議合意により完全に核放棄する、と信じている国はどこにもないであろう。これまで北朝鮮は半世紀にわたり一貫して核開発を進め、一時的な開発中止あるいは凍結と称し、その都度見返り援助を得て、ことごとく裏切ってきた。今度はそうでないという根拠はまったくない。核を手放せば、北朝鮮の強み(カード)はなくなってしまうからである。
 ワシントン駐在の産経新聞・古森義久特派員が近未来小説「SHOWDOWN(対決)」を紹介している。筆者は先代ブッシュ政権の国防副次官ジェド・バビン氏とレーガン政権の国防総省動員計画課長エドワード・ティムパーレーク氏である。その中の日本に関する部分の古森氏の要約の一部を紹介する。(Sankeiweb、産経スペシャル、ワシントン報告)

 2008年の北京オリンピックを成功させた中国指導部は、国内の失業や貧困から目をそらせて人民の自国への帰属意識を高めるために、周辺諸国を従属させて中国の覇権を誇示する必要があり、そのためには日本を屈服させれば、他の国にもドミノ効果があると考えた。
 こうして2009年早々、中国は靖国神社参拝問題等を材料に国内の反日デモを活発化し、尖閣諸島附近で演習を行って日本を挑発し、日本上空に警告のミサイルを発射した。さらに靖国神社に巡航ミサイルを撃ち込み、尖閣諸島附近で日中双方の海上部隊の戦闘が始まる。しかし、サイバー攻撃で航空管制、証券取引所その他多数の電子システムが破壊され、日本は苦戦する。
 この時期を選んで、北朝鮮が韓国に進攻を開始した。中国は沖縄に対して巡航ミサイル攻撃を行うが、侵攻はどうにか防いだ。ところが北朝鮮が突然大阪に核攻撃を加えた。米国はここで北朝鮮に核の報復攻撃を加え、北朝鮮は国家として存在しなくなった。
 一方、日本は尖閣諸島を中国に提供し、屈服した。米中間では本格的戦争とせず停戦が成立した。米軍は日本、韓国からも間もなく引き上げ、中国が東アジアの全域を支配することになるであろう。

 本書は間もなく邦訳が産経新聞出版から刊行される。国の安全保障には、あらゆる事態・可能性を想定した長期的戦略が不可欠であるが、米国政府元高官が考えるようなことは、他の誰かが考えても不思議はないのである。