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国防とヌーベルバーグ

キャスター・ライター
桜林美佐

 今年、防衛庁が「防衛省」に移行し、長い間「防衛庁の跡地」と呼ばれた六本木の広大な土地も「東京ミッドタウン」に姿を変えた。こうした、画期的「変化」という様々な事象は、「何か」が大きく変わるような、漠然とした期待感を抱かせる効果がある。しかし、そうした事々が、時には、誤魔化し、目くらまし的に利用されることも忘れてはならないのである。
 今回、自衛隊の国際活動が本来任務化された。自衛隊の海外での活動が高く評価されていることを鑑みれば必然的な流れであり、また、私たちの想像以上に厳しい環境下での国際任務を、土木工事受託や運動競技会への協力と同等の「雑則」に位置づけていたことがそもそもおかしかったのだ。
 しかし、現場で汗を流す自衛官が、これらの「変化の波」に乗って堂々と大海に躍り出ているのかと言えば、そうでもない。集団的自衛権や武器使用の制限についての変更は未だ無く、これでは浮き輪も着けずに荒海に放り出されるようなものではなかろうか。
 イラク先遣隊長であった佐藤正久氏の『イラク自衛隊「戦闘記」』(講談社)に詳しいが、自衛隊は「自己の管理下」に入っていなければ、邦人が攻撃されても、彼等を守るために武器を使うことはできない。まして「管理下」の定義も曖昧かつ複雑である。もし判断を誤れば日本の裁判所で裁かれ、罪に問われるという、もはやこれは悲劇というより他ないのである。
 確かに目の前に「大きな波」は来ているように見える。しかしこの波に太刀打ちできるかどうかは政治の判断一つにかかっていると言っていい。庁だ省だと言葉遊びに興じている暇はない、一刻も早く「軍隊」としての機能が求められるところであり、それが、平和を愛する者の望みである。