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「東アジア共同体」と日中関係

大阪国際大学講師
久野 潤

 『外交青書』2006年版は、今日のアジアでは「東アジア共同体に向けた動きがかつてない高まりを見せている」とし、「東アジア共同体は経済・社会面を中心とした地域協力の促進を通じて、繁栄し、安定し、協調的な東アジアを実現しようとするもの」であり、「台頭する中国とインドという2つの大国を、東アジア地域の平和と繁栄に対して建設的に貢献する国として迎え入れていこうという取組でもある」とする。また続きの部分では「日中韓協力の一層の促進は、地域の平和と繁栄に資するとともに、将来の東アジア共同体形成も視野に入れた東アジア地域協力の更なる発展にも貢献するものであり、引き続き重視していく」としているので、日本と中国の関係が「東アジア共同体」形成に向けて非常に重視されていることは疑いない。これについては民間の東アジア共同体評議会などの認識も同様であろう。
 そこで問われるのが、中国という国家とのつき合い方であることは言うまでもない。北京駐在経験もあり中国事情に精通していた安倍源基氏(元内務大臣)は著書『昭和動乱の真相』の中で、中国との関係について「排日」「抗日」(今でいうところの「反日」であろうか)だけならまだ始末はしやすいが、「侮日」思想が加わると衝突の危険性が生まれると指摘している。つまり「反日」だけならば中国に対し宥和策を講じその沈静化を図ればいいし、逆に「侮日」だけならば毅然たる態度を取り無理難題を突き返す姿勢を取ればいい。しかし従来の動向を見る限りその二つを同時に併せもっている今の中国が日本と相対している状況で、日本はどう対応するべきか。靖国問題や領土・海底資源問題などでただひたすら譲歩するだけでは両国関係が好転しないことは論を俟たない。
 こうした中国との関係の難しさを考えれば、昨今の「東アジア共同体」構想の前に横たわる課題はあまりにも大きい。それどころか東アジアで「平成の動乱」が起こらぬようにするためにも、「東アジアの将来の安定と繁栄」を目指す麻生外務大臣には然るべき対応を期待したい。