バックナンバー



漁船銃撃・拿捕から1年、北方領土問題解決への道は


 北海道根室沖の北方領土・貝殻島付近の海域で根室のカニかご漁船「第31吉進丸」(坂下登船長)が、ロシア国境警備艇に銃撃・拿捕された事件から今月16日で1年が経つ。
 この事件では漁船員、盛田光広さんが数発の銃弾を受け死亡した。1956年の日ソ国交回復以来、北方領土海域での初めての流血惨事となった。そもそも北方領土海域は日本固有の領土である。百歩下がっても、日露で係争中の領土の海で、丸腰の漁船員が一方的に、しかも至近距離から銃撃されて死亡した不条理さを日本政府は放置しておくべきではなった。
 日本政府は帰還した坂下船長から事件の詳細を徹底聴取し、その結果を国民に提示してロシアの非道ぶりを国際社会にアピールするべきであったが、ロシアからの公式謝罪、銃撃兵ら関係者の厳正な処罰を引き出せるどころか、日本政府(海上保安庁)は「第31吉進丸」が「日本側が設定する規制ラインを超えた」として、なんと坂下船長を書類送検してしまった。しかも船体の返還を実現させる外交努力もしないまま、日本政府は盛田さんを文字通り見殺しにし、事実上「坂下船長に非があった」と結論づけて事件の幕引きを強行してしまったのである。それに呼応するかのように、ロシアではアレクセーエフ外務次官が「我が国の領海をよくぞ守ってくれた」と銃撃兵を英雄視する発言を行っている。
 ロシアは世界的な石油高騰で空前の好景気が続き、日本からの経済支援を必要としていない中、北方領土問題で日本に譲歩する気などさらさらないのが現状だが、日本政府は二度と同じような事件が繰り返されないためにも、北方領土問題の解決に腰を据えて取組むべきである。小泉政権下のような「誤ったメッセージ」をロシア側に送るべきではない。
 また最近、日本側から「北方領土2等分割案」や「3島返還論」というようなものが飛び出すこと自体、領土交渉の後退につながる。北方領土問題の解決は、官民挙げて戦後一貫して日本政府が要求してきた「4島一括返還」の大原則を絶対に曲げるべきではない。
 そのためにも、まずは来年8月の北海道洞爺湖サミットは重要な意味を持っている。日本政府は各国首脳が集まるサミットの場で議長国として「北方領土問題」を取り上げるのは当然であるが、それ以上に根室のノサップ岬まで各国首脳を案内し、ロシアの不当性を歴史的にも理解してもらい、日露間に横たわる領土問題を国際社会の場へと引きずり出す努力を行うべきである。