|
|
緊迫した東アジア情勢から「逃げる」メディア
1月21日付毎日新聞朝刊のコラム「余録」に驚くべきことが書かれていた。「最近の東アジアのキーワードは『経済優先』であり、『生活重視』だ」とし、その例として「先日行われた台湾の立法院(国会)選挙」と「昨年暮れの韓国の大統領選挙」を挙げているのである。
前者については「野党・国民党が3分の2を超える議席を獲得して圧勝したが、陳水扁総統の経済政策に対する有権者の不満が、国民党の得票を押し上げた」と述べられている。ここには台湾は大陸中国に併合されてしまうか独立を保てるかといったシビアな感覚、或いは台湾での与野党の外交安全保障論議についての認識が見ての通り全くない。
後者については、「10年ぶりの保守派勝利の原動力となったのも、停滞が続く盧武鉉政権への失望だった。CEO(最高経営責任者)型大統領を目指す李明博の手腕に、国民は期待を託した」とある。やはりここでも外交安全保障の話には触れられないし、そもそも盧武鉉とは先代の金大中大統領の路線を引き継ぎ、北朝鮮による拉致問題や核問題を等閑に附すことで「南北朝鮮の友好」を謳ってきた人物である。
さらにその次の行には唖然とさせられる。「かつては韓国も台湾も冷戦構造の中、反共基地として、政治や安全保障第一の権威主義体制が敷かれていた」と。さらに「ともに民主化を進めて20年、自由な社会と先進国並みの豊かさを手にした。市民の関心が、イデオロギーより繁栄の維持に移るのも無理はない」ともいう。反共基地や権威主義体制でなくとも、国家として安全保障を第一に考えるのは当然のことである。また、中国をはじめとする他のアジア諸国の“民主化”がいかに遅々として進まなかったかを無視し、まるでこれまでの台湾や韓国がイデオロギーに凝り固まった国家であったかのような書きぶりである。
極めつけはその次の行、「既成の権威を打ち破ることで熱狂的な支持を得た2人だが、権力の座につくうちに、庶民の感覚から離れてしまったようだ」――かつて南朝鮮労働党幹部であった人物の娘を妻として“媚北外交”に勤しむ一方で我が国に対しては“歴史認識問題”を執拗に突きつけてきた盧武鉉と、「台湾人の台湾」を守るため中国と毅然と対峙し日本に対しては長年友好の意を示してきた陳水扁を、我が国の新聞がなんとこのような形で同列に並べているのである。
この台湾と韓国の選挙を当該記事は「経済優先」という概念で片付け、締め括りには「民衆は今、何を望み、何を求めているのか。そのことが分からないリーダーや政権は、自分たちの1票で交代させることができる」「それこそが、人々が民主化で勝ち取った最大の成果である」――韓国はともかく、台湾についてはまるで独立を諦めることが民主化の結果であると言わんばかりの暴論である。こんな主張しかできないようなメディアにいかなる存在意義があるのだろうか。 |
|
|