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「見て見ぬふりをする」で済まないチベット問題と軍事力増強

 26日、防衛研究所(防衛省のシンクタンク)が年次報告書である『東アジア戦略概観2008』を公表した。ここでは中国海軍の装備近代化、空母建造研究、活動区域の拡大を指摘されている。加えて昨年8月以降の「日中防衛交流」については「信頼醸成が進展しないまま『防衛交流』の看板だけが既成事実化され、中国の平和的イメージの宣伝に利用されることも予想される」と警告されている。
 これは確かに当たり前といえば当たり前であるものの、省庁関係の公式文書で指摘されたという点が重要である。以前東シナ海ガス田開発をめぐる日中協議が停滞した際に中国側が軍艦の派遣を示唆したことを踏まえている訳であるが、東シナ海の油田界隈の問題について中国側に「平和的イメージ」をもたせたまま既成事実化が進むとすればこれは大変なことである。因みに朝日は『東アジア戦略概観』で指摘された中国の国家戦略については、宇宙開発について触れているのみである。
 中国は、目下の「チベット動乱」問題(これまで中国側はチベット側に原因のある騒擾であると主張し、多くの日本メディアもそれに追随してきた)でその平和観・人権観などについて各国の信頼を失いつつある。ドイツ、チェコ、ポーランドの首脳が五輪開会式に参加しない旨を発表、フランスのサルコジ大統領もその可能性を示唆した。
 中国の動向が世界の耳目を集めている今こそ、彼の国とシビアな国家間問題を抱えている我が国の形振りもこれまで以上に問われるというものである。前号の小欄で触れたとおり「人権抑圧を見て見ぬふりをする」ことはできない。
 と同時に、「見て見ぬふりをする」ことができないのは、自国の領海・権益が“抑圧”される(強奪されようとしている)ことについても同じである。微笑外交の延長上にある狡猾な所作をこちら側も正しく認識し、防衛研究所などの情報収集・研究成果をゆめ無駄にせぬよう草の根からも政府に然るべき対応を促せるよう声を挙げてゆかねばならない。