民主党「政権構想」の重大欠陥
麻生新政権が誕生し、いよいよ政治の焦点は解散・総選挙に絞られた。果たしてきたる総選挙で政権交代となるのかどうか、麻生首相にとっても小沢代表にとっても、まさに負ければ後がない選挙であるだけに、注目はいやが上にも高まろう。
とはいえ、こんな時こそ冷静に、一体どちらに投票することがこの日本のためになるのか、それを国民は真剣に考えるべきだと思われる。というのも、民主党支持者には申し訳ないが、民主党が政権構想として主張する政策には幾多の見逃し得ない欠陥があり、果たしてこの党にこの日本を委ねることができるか、大いに疑問なしとしないからである。
疑問の第一はやはり外交・安保の問題であろう。この二十一日、小沢代表は臨時党大会で所信表明演説を行い、九項目からなる政権構想を打ち出したが、この問題についてはほとんど内容のある言及がなされなかったからだ。一言「国際社会の平和で、日本が地球のために頑張る」としただけだったというのだ。
万年野党ならまだしも、一体この程度の認識の政党に国際社会での日本の舵取りを任せられるのだろうか。国際的なテロとの戦い、日米同盟の今後、金融危機への対処、覇権追求的な色彩を強める中国やロシアとの関係……等々、民主党が政権を担うことになれば、かかる問題への対処は一日といえども猶予は許されない。にもかかわらず、このピンぼけぶりは一体どういうことなのか。それだけではない。筆者が危惧するのは、この党の中に、それに関わる真剣な党内議論が行われた形跡すらないというお寒い事実である。
疑問の第二は経済政策である。「小泉改革以来、自公政権が市場万能、弱肉強食の政治を推し進めてきた結果、日本社会は公正さが失われ、あらゆる分野で格差が拡大した」と民主党は言う。この指摘には異論はない。また、そのために「社会のセーフティネットこそ経済が持続的に発展するための大前提だ」との認識にも全く異論はない。しかし、問題なのは提示される政策がかかるセーフティネット論に限られることだ。
あえて簡略化していえば、民主党の政策には分配の視点はあるが、その前提となるべき経済そのものの拡大という政策がない、ということであろう。弱者重視、格差是正、社会の公正さ確保という視点はよいとしても、しかしそれは社民党や共産党の経済政策とどこが違うかということなのだ。今問題となっている金融危機にどう対処するか、減速し始めた日本経済をどうするか、あるいはグローバル化が進む世界経済の中で、いかに日本経済を強くし、活性化させ、将来的な繁栄を実現して行くか……等々、かかる問題に対する認識、将来ビジョン、対処の道筋が全く見えないということなのだ。
新聞などはこうした民主党の政策に「財源が不明確だ」と、判で押したような批判を加えている。確かにそれはその通りとしても、しかし問題はそれより、この政権構想の中に経済政策としての「全体像」がないことの方が、むしろ問題としては重大なのではないか。自民党が悪い、官僚が悪いと、政府を批判することに急なあまり、しからばこの日本経済をこれからどう再構築して行くのか、かかる前向きのビジョンの方にまでは関心が回らなかったのだとしたら、誠にお粗末と言う他ない。
筆者は積極的な財政出動を否定する者ではない。しかし、それはあくまでも「将来の産業構造」をしっかり視野に入れたメリハリのある内容であることを前提としてである。ただそこに矛盾があるといっては税金をつぎ込むという旧来型の姿勢では財政はもたない。そのためにも、日本経済の確たる将来像を具体的に示してみせることが大切なのだ。
疑問の第三は、これは政権構想の問題ではないが、民主党のリベラル色の問題である。例えば輿石参議院議員会長の存在を見ればわかるように、民主党の下部構造は日教組、自治労、部落解放同盟、左翼市民運動団体等々の左翼系団体によって成り立っている。民主党はこれらの団体と果たして今後、どのような関係を築いて行くのか、という問題だ。
彼らの言う「官僚任せ脱却」はいいとしても、「組合任せ脱却」の方はどうも、というのでは話は通らない。「国民主導の政治」にするというのなら、この辺も同時にはっきりさせる必要があるのではないか。(日本政策研究センター代表 伊藤哲夫)
※日本政策研究センター発行の情報誌『明日への選択』10月号から、許可を得て転載しました。同センターのHPには「民主党特集」が掲載されています。
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